地域おこし協力隊×資格取得⇒地方で活動

地域おこし協力隊

これを読んでいただいている方の中で、↓のような思いを抱えている方はいませんか?
学生時代に憧れていた仕事があるんだけど、資格を取得できないまま社会人になってしまった。仕事で忙しくて、勉強する時間なんか作れないし、もういい歳だし、諦めるしかないのかな……」

そういう人には、「地域おこし協力隊になって、働きながら資格を取得し、やがて地域で活動する」という生き方があるかもしれません。

地域おこし協力隊とは?

地域おこし協力隊。
なんだかうさん臭い(と私は最初思いました)響きです。
果たしてまともな職業なのか? と思う人もいるでしょう。

地域おこし協力隊のポイントをまとめます。

  • 制度設計者は国(総務省)。国の移住政策のひとつ。市町村の長から委嘱されて就任する。
  • 都市部から地方へ移住をし、自治体等から与えられた仕事をして報酬を得つつ、地域への定着(=定住)を目指す。
  • 任期は基本的に3年間。更新はない。
国の移住政策の一つ

「東京一極集中」と言われるように、日本の人口は、都市部(特に東京圏、名古屋圏、大阪圏のいわゆる3大都市圏)に偏在しています。
この状態については賛否両論あると思いますが、国(総務省)としては、都市部への過度な人口集中は、望ましくない状態と考えているようです。

国としては、都市部から地方への人口異動、つまり「移住」を促したいのですが、個人が自力で移住をしようとすると、次のような課題にぶち当たります。

① 当面の仕事が見つからない。

地方では、いわゆる人脈と言われる、人的なネットワークが大きな力を持ちます。
仕事を見つける際にも、また、採用の可否を決定するうえでも、人脈の力は絶大です。
人脈は財産です。
移住者には、当然ですがこの人脈という財産がありません。
ですので、身一つで地方へ移住しても、「仕事が見つからないし、雇ってもらえない」という状態に陥りがちです。

② 事業が軌道に乗るまで時間がかかる

「仕事が見つからないなら、起業してしまえ」という発想もあります。
ただ、どんなに優れた経営計画を立てても、それが実を結ぶまでには時間がかかります。
事業が軌道に乗るまでに、手元の資金が尽きてしまうこともあります。
また、私の例がそうですが、特定の事業を始めるにあたり、資格や免許の取得が必要になるケースもあります。

③ 生活の術を知らない

地方には、その地方で生きていくために必要な、生活の知恵というものがあります。
例えば豪雪地帯であれば、雪の取り扱いを学ぶ必要があります。
その他にも、火山灰、塩害、マムシ、スズメバチ、台風、ネズミ、イタチ等々。
また、自動車の運転を覚える必要もあるでしょう。
こういった生活の術は、地元の人であれば、親や学校に教えられたり、長年の経験の中から自分で会得していったりするものですが、移住者にはそれがありません。
誰かに時間をかけて教えてもらわなければ、その地方で生きていくことはできないのです。

人脈、時間、知恵。
この3つの障害を乗り越えるにはどうしたらいいのでしょうか。

コミュニケーション能力に富んだ、パワフルな移住者であれば、地域の集まりにぐいぐい参加し、連日飲み歩いて人脈を築いていけるかもしれません。

資金力に富んだ、リッチな移住者であれば、事業が軌道に乗るまでの間、蓄えを取り崩して生活していけるかもしれません。

サバイバル能力に富んだ、タフな移住者であれば、マムシが現れても返り討ちにしてマムシ酒にしちゃうかもしれません。

ですが、普通の人にはこんなマネはできません。
普通の人でも移住できるようにするにはどうしたらよいか。

この点を、制度的に解決させようとしているのが、地域おこし協力隊という制度(政策)です。

自治体から委嘱されて就任

地域おこし協力隊は、自治体(市町村)から委嘱されて就任します。
委嘱の形態には大きく分けて3つあります。

  • ①自治体の「会計年度任用職員」として就任
  • ②自治体が指定した「地域再生推進法人」の職員として就任
  • ③自治体と業務委託契約を結んだ事業者として就任

①の「会計年度任用職員」というのは、いわゆるパートタイムの公務員のこと。
正職員ではありませんが、自治体が直接の雇用主になります。

②は数が少ないと思います。この場合には、「地域再生推進法人」の臨時職員、契約社員のような位置づけになります。

③は、団体に所属せず一個人として、自治体から業務委託を受ける形で、委嘱を受けるものです。

①~③の違いなどは、大事なことではあるのですが若干細かい話になるので、本稿では割愛します。
ここで押さえていただきたいことは、「地域おこし協力隊は(直接・間接の違いはあるにしろ)自治体から仕事を請け負い、それに対して報酬を受ける」ということです。

移住者は地方での人脈がないため仕事を見つけにくい、とお話ししましたが、地域おこし協力隊であれば、仕事(と報酬)は自治体が用意してくれるわけです。
また、自治体や団体には、地域おこし協力隊の受け入れ担当者がおり、生活上のお悩みの相談相手になってくれます。
これにより、当面の生活費を得ながら、じっくり時間をかけて、人脈や生活の知恵を身に着けることができるシステムになっているのです。

資格試験受験生から見た、地域おこし協力隊という選択

注)地域おこし協力隊の募集条件は、自治体ごと・求人ごとで異なります。
  以下の記述は、著者自身の体験談であり、あくまで参考としてご覧ください。
  実際の募集条件は、募集要項等でしっかりと確認してください。

さて。
もしこれをご覧いただいているあなたが、「なんらかの資格を取って、ゆくゆくは地方で開業したい」と考えている場合、地域おこし協力隊という選択はベターなものと言えると思います。
その理由は、

  • 3年間は、口に糊するだけの収入が得られる。
  • 地方への定着のための活動として、資格取得のための学習を認めてもらえる。
  • 地域おこし協力隊としての仕事を通して、将来の開業を見越した人脈形成ができる。

以下、ひとつずつ解説を加えていきます。

3年間の収入

地域おこし協力隊の年収(手取り額)は、だいたい230万円くらいです。
都市部でサラリーマンをされている方からすると、現職の半分~3分の1くらいだと思います。
少ないと言えば少ないですが、ぎりぎり食べていくには支障のない額と言えます。
そもそも、資格試験に注力するのであれば、贅沢などできる身分ではないわけですから、
この金額で十分と思います。

また、地域おこし協力隊はパートタイムに相当する職なので、
勤務時間は、およそ週30時間程度しかありません。
私の場合、勤務時間は8時間×週4日勤務でした。週休3日です。残業は一切ありませんでした。
勤務時間が短いことも加味すると、金額については仕方のない部分だと思います。

自主企画事業としての資格取得

私が採用された、宮崎県西都市の地域おこし協力隊の求人の条件は、次のようなものでした。

  • 業務は、大きく分けて①命令業務と②自主企画業務がある。
  • ①と②の時間比率は、おおよそ50:50とする。
  • ②の中には、「自身が地域に定着するための活動」を含む。

私の場合、この「自身が地域に定着するための活動」として、「司法書士の資格を取得し、西都市内で開業すること」を掲げました。
これにより、資格を取得することが業務の一部として認められるということになり、業務時間中に資格の勉強をすることを認めてもらえました。
(もちろん、命令業務に差しさわりがないことが条件です)

ただでさえ勤務時間が短いのに、その勤務時間の半分をも、勉強に使っていい。
資格取得のための環境としては最高でした。

協力隊活動費の存在

メリットは時間面だけではありません。
金銭面でも、大きな利点があります。

地域おこし協力隊には、給与とは別に、協力隊活動費が支給されます。
これは、自主企画事業を進めるための経費として、予算の範囲内で支弁されるものです。
生活費に充てることはできません。

前述のとおり、私は「司法書士の資格を取得し、西都市内で開業すること」を自主企画事業として認めてもらえましたので、資格取得に必要な経費を、この協力隊活動費から支弁してもらえました
具体的には、予備校の受講料や模試の受験料、参考書などの書籍費、司法書士試験の受験地(福岡県)への旅費や宿泊費などです。
これは大助かりです。

開業を見越した人脈形成にも有利

地方では、何をするにも人脈第一です。
人脈だけは、一朝一夕で築くことはできません。
日々の仕事をまじめにこなして、少しずつ信頼を積み重ねることによってしか、広げていくことはできない……と私は考えています。

この点では、地域おこし協力隊として与えられた命令業務が、非常に意味があったと感じます。
私にミッションとして課せられたのは、主として空き家バンクの運営でした。
宅建業や建築業を営む方と、業務上関わることができたのは幸いでした。

また、地域おこし協力隊は、準公務員的な地位にあることから、
中学校や高校の課外授業で講師を務めたり、地域の催しにもお呼ばれいただくなど、
一般の会社員ではなかなか体験できない活動に関わることができます。
これも、人脈を広げる意味で、大変有意義なものでした。

ただしプレッシャーはある

以上のように、地域おこし協力隊×資格取得⇒地方開業という筋書きは、
時間面・金銭面では相当に恵まれた環境ということができます。
ただし、実際にこれを実行していくのは、プレッシャーもそれなりにあります。

まず、任期が最長3年間に限定されており、更新の可能性はないこと。
泣いても笑っても、3年間というタイムリミットが課せられています。
3年間のうちに、資格を取得し、開業または就職を果たして、次の生活の糧を得られるようにしなくてはなりません。

また、何よりも大事なことは、「地域おこし協力隊とは、その名の通り、地域のための存在でなければならない」ということです。
「自分が資格を取って、地方で開業して、定住する」ということが、地域にとってプラスになるのだということを、その地域自体に認めてもらえる存在でなければならないと私は思います。
そのためには、常日頃から襟を正して生活する必要がありますし、結果もしっかりと出していかなければいけません。

地域おこし協力隊になって夢を叶える

いかがでしたでしょうか。
ご自身がどこかの地域の地域おこし協力隊となり、資格を取得するイメージはできたでしょうか?
もしそのお役に立てたのであれば、これに勝る喜びはありません。

人生百年時代と、よく言われます。
不思議なもので、「やる」と決めた瞬間から、今まで身の内に眠っていた力が急に目覚めます。
もし、皆さんの心の中に、若いころの思いがまだ燻ぶっているのであれば、
地域おこし協力隊として力を蓄えて、夢を現実のものとしてみてはいかがでしょうか。

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